京都の近代建築を訪ねて – 漢字情報センター
2007.07.22 日曜日
大丸ヴィラからタクシーで移動して10分、
次に訪れたのは北白川にある京都大学人文科学研究所付属漢字情報 センター。
外務省東方文化学院京都研究所として1930年に竣工、2000年文化庁「登録有形文化財」に指定され、現在はく京都大学付属として中国学研究のための建物として変わることなく使われています。
設計は当時京都大学教授武田伍一の指導のもと、27才の大学院生だった東畑謙三が実際の任にあたったとのこと。
「スパニッシュ・ロマネスク」といわれるこの建物は、スペインの僧院を模したロマネスク様式に東洋風を加味し、中央の尖塔をはさんで書庫と閲覧室、中庭の周囲に研究棟という構成です。
中庭に出るとスペインのPATIOを模しているものの、ところどころ日本的な雰囲気が…
中庭に面する回廊の連続するアーチ開口にはガラス建具がはめ込まれています。
当初はオープンだったのですが、京都の気候に合わせ後で建具が入れられたそう。
1階建ての研究棟も設計当初はあとで増築し2階にする予定だったのですが、戦争の影響で予算がなくなり1層のままに、なので現在の屋根は仮屋根とのことでした。
この屋根、瓦の形はスパニッシュ瓦なのですが、色はいぶし銀で和瓦のよう。
2階から見下ろす中庭に面した屋根の風情は、小さな虫小窓のような窓があり、どうみても町屋の風情。
内部は全体としてスパニッシュで、天井から吊されている鳥かごのような球体の照明が妙にかわいい。
そのなかにも、あちらこちらに東洋を感じさせる桃や獅子などの文様の陶板が壁に埋め込まれています。研究室それぞれのドアには、名札のように全て異なった東洋モチーフの小さな鉄製の飾り金物がつけられていました。
書庫はスチールブリッジや吹き抜け、スリガラス天窓があり、他とは違ったダイナミックなイメージ。
飾り細工を施したスチール手摺が意匠性を高めています。
閲覧室は以前講義室として使われていたらしく、壁には掛図用のスチールバーが取り付けられていました。
講義台位置はかなりレベルが高く、見下ろすように講義が行われていたそうです。
写真で見ていたとき何だろうと思っていた、壁から天井に張られた素材はなんとコルクタイル。
継ぎ目を黒く染色し目地を強調して印象的。
天井が高く、教会を思わせるような雰囲気ですが、ここにも東洋モチーフが埋め込まれていました。
何故、中国学の研究施設なのにスパニッシュ・ロマネスクなのか?
中国学の研修施設だから、せめて建物だけでも西洋のものにしたかったようです。
ところどころにあしらった東洋モチーフはせめてもの印でしょうか。
しかし、西洋の方が来られたとき、建物をぱっと見て、どうしてこんなことをしているのかと違和感を覚えられるらしく、東洋風スパニッシュ・ロマネスクは日本人が見たものと違って写っているのかもしれません。
見る部分やアングルによってスペイン、イスラム、中国、京都と違ったデザインを発見し、様々な文化・様式を混在させ成立させてしまう日本人の特性をみるようです。
3階テラス、塔屋から望むのは山々と大文字さんの大と妙 素晴らしい眺望です。悠久の時が流れ、ここで研究されていることは研究者にとって幸せなことに感じます。